けんとじのお薬案内所

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風邪の漢方薬のどれがいいの??選び方①

こんにちは薬剤師のけんとじです!

年末にインフルエンザA型にかかりました…皆様もお気をつけくださいませ。

 

今回は風邪の漢方薬について、お話ししたいと思います。第一弾です。風邪の漢方薬は色々と有りますが、皆様は選び方、ご存知でしょうか?最近は風邪の漢方薬に使われる生薬を配合した風邪薬も発売していますね。

 

※生薬・・・漢方薬に使われる植物や動物を乾燥させたりしたもの。たとえば葛根湯の葛根など。後述の内容でも登場するので、覚えておいてください。

 

風邪の漢方薬は症状にあった薬を選ぶことがとても大切です。それでは、風邪の漢方薬の選び方のポイントを解説していきたいと思います。

 

 

 

風邪の漢方薬のありがちなイメージ

風邪の漢方薬について皆様どのようなイメージをお持ちでしょうか?

店頭に立っていてよく聞かれるのが「漢方薬って効いてくるのに時間かかるんでしょ?」と言うお話です。

実は風邪の漢方薬は体質を改善するための物とは言えないので、効いてくるスピード感は通常の風邪薬と同様と考えて頂いて良いと思います。

意外に感じますよね。でも実際に葛根湯など服用するとすぐに暖かく感じますね。

  

風邪の漢方薬のメリットとデメリットは?

次に、風邪の漢方薬のメリットとデメリットについてお話ししたいと思います。

 メリット

 自分が考えるメリットを挙げてみました。

  1. 眠くなる成分を含まない。便秘や口の渇きも起きにくい。
  2. 普通の風邪薬では効きにくい症状を改善することができる。
  3. 食事を摂らなくても服用することが可能。
  4. 一般の風邪薬と同じスピードで効果がでてくる。

漢方薬眠くなる成分を含まないことは有名ですね。眠くなる成分は同時に便秘や口の乾きも引き起こしますので、それらも出づらいですね。

また、特に自分がメリットだと感じることは漢方薬にしか出せない作用があり、漢方にしか改善出来ない症状があることです。これこそ漢方薬の神髄では無いのかとおもいます。

 

では、次はデメリットを見ていきましょう。

 

デメリット

自分がデメリットとして考えられるものを挙げてみます。

  1. 症状に合わないと効きにくい。
  2. 粉薬が多いため、飲みにくい。
  3. 食前または食間の服用であるため、忘れやすい。

それなりに有りますね。デメリットですが、理由はしっかりありますので、1つずつ見ていきましょう。自分はそこまでデメリットと感じてはおりません。

 

1→漢方薬は症状に合わないと効きにくいです。闇雲に服用しても症状の改善が見込めません。普通の風邪薬に比べて選ぶのが難しい理由がこれになりますね。

 

2→錠剤もありますが、自分はお勧めしません。粉薬の方が漢方薬が濃い傾向にあるためです。箱の成分表記をみると分かるのですが、錠剤の風邪の漢方薬はエキス量が少なくなっています。また、粉薬の一日2回タイプの漢方薬も同様ですので、一日3回タイプのものがお勧めです。

 

3→食前服用の理由は漢方の効果を出すには腸内細菌が絡むからです。漢方に含まれる生薬の有効成分が腸内細菌によって発酵や分解されて効果を発揮するものがあるため、食事と一緒よりも空腹時のほうが良いとされています。

 

 デメリットではありませんが、風邪の漢方薬は基本的に長期で服用することは控えた方がよいです。風邪の漢方薬は一時的に乱れた体内のバランスを整えるもので、一時的に使用するものです。長期で服用することで、かえって体調への悪影響も考えられます。注意しましょう。

 

風邪の漢方薬を大まかに二つに分けて考えよう

風邪の漢方薬は大まかに言うと体を温める漢方薬と体を冷やす漢方薬の二種類に分けられます。体を温めたり冷やしたり出来るのは漢方薬独特の作用です。西洋薬(通常の総合風薬)では出せない作用です。

 

基本的には体を温める作用は初期の風邪に使用することが多いです。反対に体を冷やす作用がある漢方薬はは後期の風邪に使用することが多いです

 

これは病原菌が体内に侵入すると、最初に寒気を感じて震えで体温を上げることで免疫力を上げ、病原菌、ウイルスに対抗していると言えます。

人間は体温が上がると免疫力が上がります。1℃体温が上昇すると免疫力に関係する白血球の働きが30%アップするとも言われています。蛇足ですが、最近の日本人は昔に比べて平熱が下がって来ているらしいです。

 

また、体を温める風邪の漢方薬は体力を消耗する傾向があります。このことに関わらず、風邪の漢方薬の長期での服用はお勧めしません。

 

体を温める漢方薬

体を温める作用のある漢方薬はしょうが湯や白湯で服用するのが効果的です。白湯にといて服用するのもいいですね。味は我慢してください(笑)

では、見ていきましょう。

 

1麻黄湯

風邪のごく初期の寒気、悪寒、頭痛などの症状に使用します。

この漢方薬では麻黄という生薬と桂皮(シナモンと考えてください)が体を強力に温め、発汗させます。作用が強いため体が虚弱な人、体力がひどく衰えてしまった方やお年寄りなどには使えません。薬の作用に体が耐えられないためです。

ちなみに麻黄には咳を改善する作用もあります。

また、処方薬ではインフルエンザなどの急激な寒気、節々の痛み、頭痛などで使われる。市販薬では効能効果としては認められていないため、インフルエンザへの使用は控えて疑わしい場合は受診するようにしましょう。

38℃を超える発熱や周りにインフルエンザの方がいた場合はインフルエンザが疑われますので、自分は店頭で相談があった際は受診を勧めています。

 

2葛根湯

風邪の初期に使い、頭痛、寒気や節々の痛みがあるときに適しています。

大雑把に言うと葛根を加えて麻黄湯をマイルドにしたものですね。葛根湯と聞くと温まるイメージがありますが、生薬の葛根自体は体を冷やします。先ほどの麻黄湯にも配合されている麻黄+桂皮が温めて、発汗させます。葛根湯も体力がある程度ある方に使うようにします。

また、葛根自体は肩から首までの筋肉をほぐす作用もあるため、葛根湯は肩こりで使用する方もおられますが、長期での服用は自分はお勧めしていません。長期での服用であれば専用の独活葛根湯などが良いと思われます。

 

また、効能効果にはありませんが、体を適度に温めますので、免疫力アップを期待しての風邪の予防にも使われることがあります。自分も周りに体調不良の方がいる時などに使うことがあります。個人的には常備薬におすすめの漢方薬ではないのかと思います。

 

ちなみに店頭にはドリンクタイプのものもありますが独特の味があり、より効いてると感じられるのかも?とひそかに思っています(笑)意外に売れますしね。ただ、粉を白湯に溶かした方が経済的ですし、白湯の方が効果的ですね。

 

3小青竜

この漢方薬は鼻水、鼻詰まり、咳を改善します。そのため、風邪だけではなく、アレルギー性鼻炎や気管支ぜんそくなどに使用したりもします。

効果を簡単に言うと、体を温める作用+上半身の水分代謝の改善+咳改善 です。

小青龍湯は体を温めることで、水分を飛ばし、鼻水や痰を改善します。それに加えて鼻づまりや咳を改善する生薬が入っています。

暖かい室内から寒い屋外に出ると透明な鼻水が出た経験はありますか?これは鼻から入る空気を暖めるための生体反応の一種なのですが、体が冷えると透明な鼻水や痰が出ます。中医学では体が冷えることで水分がたまってしまい、鼻水や痰として出てきてしまうと考えます。

 

4柴胡桂枝湯

この漢方は例外的に風邪の中期〜後期の症状に適しています。適している方は、風邪がなかなか治らず、1週間近く症状が続いている方や、吐き気や下痢がある胃腸炎の方です。

効果のイメージとしては胃腸を整えることで、消化吸収をよくし、免疫力を高め、吐き気や下痢の症状を抑えていきます。イメージの通り、この漢方薬に関しては虚弱な方も使っていただけますね。

 

最後に… 

風邪の漢方薬のイメージはつかめていただけましたでしょうか?

風邪の漢方薬は温めるものか冷やすものかで分けると比較的すっきりと理解できると思います。悩みの症状にあった漢方薬を使っていきたいですね。自分も店頭では症状に合ったものを紹介していかないといけません。

それでは、次回は体を冷やす風邪の漢方薬について記事にしたいと思います。

 

すこしボリュームがあったかもしれませんが、ここまで読んでいただきありがとうございました。では、また!